1から6までの自然数が等確率で出てくるサイコロを3回振るとき,以下の問いに答えなさい.
① 出た目の積が5の倍数になる確率を求めなさい
② 出た目の積が10の倍数になる確率を求めなさい
サイコロを振って○○,というのはよく見かける問題ですね.
2022年の福島大学の問題から選んできました.
①がヒントになって②につながるので,難易度としては①が簡単で②が難しいという流れです.
これを解いていこうと思ったのですが,直接考えていくと②が難しくて躓いてしまいました.入試問題は難問でなくても難しいですね.
順を追って分析していきます.
これは,確率の問題ではあるものの,場合の数を考える問題でもあり,集合を考える問題でもあります.
3回振ったサイコロの目を{〇, 〇, 〇}のように表すとします.
1がでて2がでて3がでる⇒{1, 2, 3}
これを1通りとすると,全部で6×6×6=216通りの場合の数があるわけです.これが全体集合(U)であり, n (U) = 216 になります.
「出た目の積が5の倍数になる」という事象は「{〇, 〇, 〇}の中に少なくとも1つ5が含まれる」
と言い方を変えることができます.
また「出た目の積が2の倍数になる」は「{〇, 〇, 〇}の中に少なくとも1つ偶数が含まれる」と変換できます.

ベン図にするとこのようなイメージです.$ n(U)=216 $ がわかっています.
①については $ n(A) $ の部分を求めるということなので,$ n(U) - n(\overline{A}) $ から計算できそうです.つまり全体から「5が1つも含まれない」場合を引く方針で出すことができます.
(少なくとも○○というワードがでてくるときは,それが全くない場合を考えてみる)
「5が1つも含まれない」をいいかえると,「1, 2, 3, 4, 6 のみの場合」といえるため, 5×5×5=125 通りです.これを全体から引くことで,
216-125=91 通りと計算できます.$ n(A)=91 $
「出た目の積が5の倍数になる」の部分が求められました.確率は全体の216で割ればでます.
次は「出た目の積が10の倍数になる」場合を考えます.これはベン図でみて $A \cap B $ の部分に相当します.2の倍数で5の倍数なら10の倍数になります.

このAかつBの部分を求めるためには
AのなかでBと重ならない部分 $ A \cap \overline{B} $ を求めるか
BのなかでAと重ならない部分 $ B \cap \overline{A} $ を求めるか
を考えるのが直接的だといえますが,簡単ではありません.
ただ n(B) についてはさきほどと同じように $ n(U)-n( \overline{B} ) $ を考えることで $ n(B) = 216- 3^3 = 216-27 = 189 $ と求めることができます.
(「少なくとも1つの偶数」に対して,余事象「1つも偶数を含まない場合」を考える)
次の方法として,間接的に求められないかを考えていくことになり,
この場合は,$ A \cup B $ について求められないか,と考えます.ここも簡単ではないため,さらに間接的に,AでもBでもない図の外側の部分( $ \overline{A} \cap \overline{B} $ )を使うことを考えます.

このAあるいはBの外側の部分は $ \overline{A} \cap \overline{B} $ あるいは $ \overline{A \cup B} $ と表され,「5が1つも含まれず」かつ「偶数が1つも含まれない」という事象を表しているため,「1と3のみが含まれている」場合と考えられます.
1と3のみの場合の数は,2 × 2 × 2 = 8 通りです.
ここが求まることで,A U B を求めることができ, n(A U B) = n(U)- n ( $ \overline{A \cup B} $ ) = 216 - 8 = 208 となります.
n(A U B) がでたら,n(A) と n(B) をあわせて n(A $ \cap $ B) を求めることができます.
個数定理 n(A $ \cap $ B) = n(A) + n(B) - n(A U B) を思い出します.
91 + 189 - 208 = 72 と計算できます.
確率については,72 ÷ 216 = 1/3 と求まります.

最終的には各領域の要素の個数がすべて求まりました.
(参考)もし直接解いていくと,どうなるか・・・
すべての場合の目の出方を出力しました(PCでスプレッドシートを用いています).
216通りです
{1, 1, 1}{1, 1, 2}{1, 1, 3}{1, 1, 4}{1, 1, 5}{1, 1, 6}{1, 2, 1}{1, 2, 2}{1, 2, 3}{1, 2, 4}{1, 2, 5}{1, 2, 6}{1, 3, 1}{1, 3, 2}{1, 3, 3}{1, 3, 4}{1, 3, 5}{1, 3, 6}{1, 4, 1}{1, 4, 2}{1, 4, 3}{1, 4, 4}{1, 4, 5}{1, 4, 6}{1, 5, 1}{1, 5, 2}{1, 5, 3}{1, 5, 4}{1, 5, 5}{1, 5, 6}{1, 6, 1}{1, 6, 2}{1, 6, 3}{1, 6, 4}{1, 6, 5}{1, 6, 6}{2, 1, 1}{2, 1, 2}{2, 1, 3}{2, 1, 4}{2, 1, 5}{2, 1, 6}{2, 2, 1}{2, 2, 2}{2, 2, 3}{2, 2, 4}{2, 2, 5}{2, 2, 6}{2, 3, 1}{2, 3, 2}{2, 3, 3}{2, 3, 4}{2, 3, 5}{2, 3, 6}{2, 4, 1}{2, 4, 2}{2, 4, 3}{2, 4, 4}{2, 4, 5}{2, 4, 6}{2, 5, 1}{2, 5, 2}{2, 5, 3}{2, 5, 4}{2, 5, 5}{2, 5, 6}{2, 6, 1}{2, 6, 2}{2, 6, 3}{2, 6, 4}{2, 6, 5}{2, 6, 6}{3, 1, 1}{3, 1, 2}{3, 1, 3}{3, 1, 4}{3, 1, 5}{3, 1, 6}{3, 2, 1}{3, 2, 2}{3, 2, 3}{3, 2, 4}{3, 2, 5}{3, 2, 6}{3, 3, 1}{3, 3, 2}{3, 3, 3}{3, 3, 4}{3, 3, 5}{3, 3, 6}{3, 4, 1}{3, 4, 2}{3, 4, 3}{3, 4, 4}{3, 4, 5}{3, 4, 6}{3, 5, 1}{3, 5, 2}{3, 5, 3}{3, 5, 4}{3, 5, 5}{3, 5, 6}{3, 6, 1}{3, 6, 2}{3, 6, 3}{3, 6, 4}{3, 6, 5}{3, 6, 6}{4, 1, 1}{4, 1, 2}{4, 1, 3}{4, 1, 4}{4, 1, 5}{4, 1, 6}{4, 2, 1}{4, 2, 2}{4, 2, 3}{4, 2, 4}{4, 2, 5}{4, 2, 6}{4, 3, 1}{4, 3, 2}{4, 3, 3}{4, 3, 4}{4, 3, 5}{4, 3, 6}{4, 4, 1}{4, 4, 2}{4, 4, 3}{4, 4, 4}{4, 4, 5}{4, 4, 6}{4, 5, 1}{4, 5, 2}{4, 5, 3}{4, 5, 4}{4, 5, 5}{4, 5, 6}{4, 6, 1}{4, 6, 2}{4, 6, 3}{4, 6, 4}{4, 6, 5}{4, 6, 6}{5, 1, 1}{5, 1, 2}{5, 1, 3}{5, 1, 4}{5, 1, 5}{5, 1, 6}{5, 2, 1}{5, 2, 2}{5, 2, 3}{5, 2, 4}{5, 2, 5}{5, 2, 6}{5, 3, 1}{5, 3, 2}{5, 3, 3}{5, 3, 4}{5, 3, 5}{5, 3, 6}{5, 4, 1}{5, 4, 2}{5, 4, 3}{5, 4, 4}{5, 4, 5}{5, 4, 6}{5, 5, 1}{5, 5, 2}{5, 5, 3}{5, 5, 4}{5, 5, 5}{5, 5, 6}{5, 6, 1}{5, 6, 2}{5, 6, 3}{5, 6, 4}{5, 6, 5}{5, 6, 6}{6, 1, 1}{6, 1, 2}{6, 1, 3}{6, 1, 4}{6, 1, 5}{6, 1, 6}{6, 2, 1}{6, 2, 2}{6, 2, 3}{6, 2, 4}{6, 2, 5}{6, 2, 6}{6, 3, 1}{6, 3, 2}{6, 3, 3}{6, 3, 4}{6, 3, 5}{6, 3, 6}{6, 4, 1}{6, 4, 2}{6, 4, 3}{6, 4, 4}{6, 4, 5}{6, 4, 6}{6, 5, 1}{6, 5, 2}{6, 5, 3}{6, 5, 4}{6, 5, 5}{6, 5, 6}{6, 6, 1}{6, 6, 2}{6, 6, 3}{6, 6, 4}{6, 6, 5}{6, 6, 6}
この時点で,手作業では無理ですが,さらに3つの数の積を求めます.
1,2,3,4,5,6,2,4,6,8,10,12,3,6,9,12,15,18,4,8,12,16,20,24,5,10,15,20,25,30,6,12,18,24,30,36,2,4,6,8,10,12,4,8,12,16,20,24,6,12,18,24,30,36,8,16,24,32,40,48,10,20,30,40,50,60,12,24,36,48,60,72,3,6,9,12,15,18,6,12,18,24,30,36,9,18,27,36,45,54,12,24,36,48,60,72,15,30,45,60,75,90,18,36,54,72,90,108,4,8,12,16,20,24,8,16,24,32,40,48,12,24,36,48,60,72,16,32,48,64,80,96,20,40,60,80,100,120,24,48,72,96,120,144,5,10,15,20,25,30,10,20,30,40,50,60,15,30,45,60,75,90,20,40,60,80,100,120,25,50,75,100,125,150,30,60,90,120,150,180,6,12,18,24,30,36,12,24,36,48,60,72,18,36,54,72,90,108,24,48,72,96,120,144,30,60,90,120,150,180,36,72,108,144,180,216
5で除して余り0 のものを抽出すると,91個ありました.FILTER関数とMOD関数を利用すると即計算できてしまいます, =FILTER(D:D,MOD(D:D,5)=0)
10 で除して余0のものを抽出すると,72個ありました.(上記関数の5→10にするだけ)
実生活でもし解決しなければならない,そして答えがわからない,というときには,PCを使用することで解を得ることもできます.そういう方法があるということを知っておくのも無駄ではないかと思います.
PCを用いない場合はかなりの時間と労力が必要となるので,やはり余事象や集合の考え方を用いるのが一番いいと思います.