高校になると数学のレベルが上がるといわれます.
学習していて壁に突き当たってしまうこともあると思いますので,そんな時のために解決策を考えてみました.
・ネットで納得のいく解説を探す.
・わかっている人に聞く
などは極めて有効な解決策ですが,独力でなんとかしたいときは,どうするか?
あくまで個人的な意見ですが,
「目の前の問題の easy mode あるいは hard mode を考えてみる」
というのが,有効な方策かもしれません.
例を出して説明していきます.
数学Aの最初の単元が「場合の数」です,青チャートにはこんな問題が載ってます(少し簡略化しています).サラっと解けますか?
540の正の約数は全部で何個あるか.
これがサラっと解けた.あるいはサラっと理解できた.という人はきっと自分でガンガン青チャート解いていける上位数パーセントの人なので,多少の壁は自力で突破していけるはず.
とりあえず解き方は次の通りです.
まず最初に,約数の個数は一般化されており,$N=p^aq^br^c・・・$ と素因数分解される整数Nについて,約数の個数は $(a+1)(b+1)(c+1)・・・$
となることが,わかっています.これを用いてまずは
$540=2^2・3^3・5^1$
と素因数分解できます.
そしたら,3 × 4 × 2 = 24 となるので,24個(答え)とでます.
どうでしょうか,私自身はかなり難しいと感じます.正直なところ,一段一段の段差が高い階段を登っているような感覚ですね.これで基本例題かよ,,と感じる人は少なくないでしょう.
実はこの問題では「約数の個数」「約数の総和」という2つの課題が問われているのですが,両方を掘り下げていくとかなり長くなりそうなので,この記事では「約数の個数」のみに注目しています.
基礎問題精講に目を移すと,次のような問題が載っています.
72の正の約数について
(1) その個数を求めよ
(2) その総和を求めよ
対象となる数字そのものが小さくなったことで,ややとっつきやすくなったように感じます.これは easy mode になってますね.
やり方の本質はさきほどと同じなので,素因数分解して
$72 = 2^3・3^2$
よって約数の個数は $4 × 3 = 12$
と答えに行きつきます.
ただし,なんかすっきりと理解できないので,さらに easy mode を自分で考えてみます.
72からさらに小さな数 (36 → 18 → 12 → 6 など) を考えてみます.
やってみるとわかりますが,素因数分解することや約数の数え上げはどんどん簡単になるのですが,それだけではなんだかすっきりしません.
結局,約数をどうやって求めていくのか,探していくのかという疑問に行き当たります.そこで次の表を作りました.
この表のように,素因数が2つであれば表に書き出すことができ,この表の▢で囲んだ部分が,約数の集まりになっていることがわかります.
36→18→6 と数字を簡単にしていくと,この表における a や b の値が小さくなりますので,約数の個数も減少します.
例えば,6(a=1, b=1) の場合を考えると,表から {1, 2, 3, 6} の4つが見えてきます.(下の画像の色付きの部分)
同様に 4 (a=2, b=0) であれば,1, 2, 4 が見えますし,18 (a=1, b=2) であれば 1, 2, 3, 6, 9, 18 が見えると思います.あえて hard mode にすると 108 (a=2, b=3) では 1, 2, 4, 3, 6, 12, 9, 18, 36, 27, 54, 108 が約数として見えてくるわけです.もっと大きな数はこの表を拡大していけば,その約数全てを拾うことができるわけです.
約数全てがこの表から拾えるのであれば,表の縦×横で約数の個数が求められますね.
(約数の総和を求めるときも,この表の数を全部足すだけです)
これ以外にないのかい?と思うかもしれませんが,約数というのはすべて素因数 (と1) から構成されていて,この表で素因数の各乗数の組み合わせが網羅されているため,これですべてになるはずです.
今までは「割り切れるかどうか」を考えて約数を見つけていたはずなので,6の約数は {1, 2, 3, 4, 5, 6} を順に試していって 割り切れる{1, 2, 3, 6} の4つが約数だと見つけていたと思います.
ところが,今やった表のように,「指数の組み合わせから探していく」ほうが,より汎用性が高いやり方になります. 素因数分解 ($6=2^1×3^1$) した上で,指数の組み合わせを考えて
{$2^0×3^0,\ 2^1×3^0,\ 2^0×3^1,\ 2^1×3^1$} → {$1, 2, 3, 6$} と数え上げていく方法を身に着けることができました(か?).
表の様にして約数が決まる(見つかる)とすれば,一般化して $N=2^a×3^b$ の約数の個数が $ (a+1)×(b+1) $ で決まることも感覚としてわかりやすくなったでしょうか.
ここでもまだ多少の論理の飛躍があるように感じるかもしれません.別の角度から約数を考えてみます.
約数⇒ 割り切れる数 ⇒ 〇×▢ ・・・割る数×商(あるいは因数×因数)とできる数です.
72の約数⇒ 2×2×2×3×3=〇×▢ となる〇 (あるいは▢) が約数になるので,2を何個とりだすのか ( 0個なのか1個なのか2個なのか3個なのか) の4通りから1つ選ぶ,そして3を何個とりだすのか ( 0個なのか1個なのか2個なのか) の3通りから選ぶ,というやり方で積をつくればそれが約数になってるはずです.積の法則というのをやっていれば理解しやすいですがこのようにして,4 (通り) × 3 (通り) = 12 (通り) の約数が作れるわけです.
数字を数字のまま扱うのは概念として難しいので,さらに具体化 (easy mode ?) して別問題を作成してみます.
みかんが3個,りんごが2個ある.それぞれを取り出す組み合わせは何通りか.(ここでは 0個&0個も1通りと数えることにします)
いちいち言わなくて大丈夫だとは思うのですが,2を何個採用するのか → 「みかん」 3を何個採用するのか → 「りんご」 に置き換えただけです.
このセル(ます目)の数が12個あるので12通りと答えることができます.
表でやったことを樹形図にすることもできます.
約数の個数の問題が,みかんとりんごの問題にかわってきていますが,考え方としてこちらのほうがわかりやすく感じる人もいると思います.
もちろん,余計にこんがらがってきたよ,という人もいると思うので,みかんやりんごよりも数字は数字として考えた方が直接的でいいかもです.
このへんは個人個人感じ方が違うので,あるいはお金に変換して例えば
「みかん・りんご」⇒「1000円札・100円玉」のように考えた方が圧倒的に理解できる人もいるでしょう.
1000円札が3枚,100円玉が2枚ある.それぞれを取り出して作れる金額の組み合わせは何通りか.(ここでは 0円も1通りと数えることにします)
少し脱線したかもしれませんが,こうやって $N=2^a×3^b$ の約数の個数が $ (a+1)×(b+1) $ で決まるというところまでこれたら,hard mode を考えていくとさらに一般化することができます.
$N=2^a×3^b×5^c$ の約数の個数は?
⇒$ (a+1)×(b+1)×(c+1) $
3つ以上の因数がでてくると表にするのは難しくなりますが,樹形図で考えることはできます.$540=2^2・3^3・5^1$ の場合だと下の図です.
a乗であれば 0 の時も考えて (a+1) 通り,b乗であれば 0 の時も考えて (b+1) 通り,c 乗であれば同様に (c+1) 通り を考えることになって,素因数が3つの時でも同じように考えることができます.
さらに hard mode になりますが,2, 3, 5 のほかに 7 が素因数になったら?
7の指数が d だとすると (d+1) をかけたら約数の数を出すことができますね.
そんなわけで,
$N=p^aq^br^c・・・$ と素因数分解される整数Nについて,約数の個数は $(a+1)(b+1)(c+1)・・・$
という一般化された式を理解することに近づくことになります.
このように easy mode を考える際には,「数を小さくしてみる (540→72)」「種類を減らしてみる (素因数5を省く)」「具体化してみる (みかんとりんご)」,他には「次数をさげてみる」なんかもありかもしれません.
easy mode を考えていく中で,法則性とか一般化などの手がかりが見えてくることがあります.具体的→抽象的 というステップアップは hard mode にするということですが,easy にして hard にして というのをやってみると,物事の見え方が変わってくるので,問題に行き詰った時は,考えてみてはどうでしょうか.
長くなりましたが,参考になれば何よりです.
「遠回りすることが一番近道」by イチロー